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23話 初めてのネグリジェと、甘い寝息

Auteur: みみっく
last update Date de publication: 2025-10-08 06:00:34

「じゃあ、はじめようか」

 護衛たちが臨戦態勢に入るのを確認しながら、俺は昔の映画で見た双剣使いの動きを思い出していた。 手には、逆手に握った二本の木製ナイフ。 最小限の動きで、迫り来る護衛たちを迎え撃つ準備は整っている。

バチンッ! バチンッ! ポスッ。 バチンッ! ポスッ。 ポスッ。

 乾いた木刀の衝突音。そして、木製ナイフが護衛の身体に食い込む鈍い衝撃音。 広々としたリビングに、鋭く激しい音のリズムが響き渡る。

 そのたびに、一人、また一人と地に伏していく護衛たち。 狙いは正確、動きは迷いなく――その軌道はまるで、計算された舞のようだ。

 たった数十秒。 その短い時間で、すべてが終わった。

 ――その時、お風呂から上がったミリアが、湯気を纏いながらリビングに戻ってきた。目の前の光景に息を呑み、目を丸くしている護衛たちを一瞥すると、不安と怒りが入り混じった声で叫んだ。彼女の青く透き通ったキラキラした瞳が、激しく揺れている。

「貴方達! 何をやっているのですか! ユウヤ様……だ、大丈夫ですか!?」

 その声には、俺を案じる切実な気持ちと、護衛たちの失態に対する強い憤りが込められていた。

「あ。う、うん。暇だったんで……遊んでもらってただけだから」

 俺がそう言うと、ミリアの表情が僅かに緩んだ。その瞳の奥に、安堵の色がほんの一瞬、覗いた。

「そ、そうなのですね……皆、有難うございました。下がって良いですわよ」

 ミリアは気を取り直して、護衛たちに労いの言葉をかけた。しかし、その声にはまだ、わずかな怒りが残っている。

「はい。ご指導、有難うございました。ユウヤ様」

 何故か護衛にお礼を言われた。遊んでもらっていたのは俺の方なのに。彼らの顔には、疲労の色と共に、得難い経験を積めたという充実感が滲み出ていた。

♢お風呂上がりの膝枕、甘やかな時間と労いの言葉

「ユウヤ様……膝枕ですわ」

 湯気を纏ったミリアが、青く透き通った瞳を潤ませながら、甘えた声で俺を見上げた。お風呂上がりの彼女の頬は、ほんのりと桜色に染まり、湯気を吸い込んだ柔らかな肌からは、仄かに甘い石鹸の香りが漂ってくる。

「ちょっと待ってて。護衛を疲れさせちゃったから」

「はい?」

 ミリアは素直に小首を傾げた。お風呂上がりで、濡れた髪が肩にかかり、その姿は一層あどけなく、愛らしい。護衛を疲れさせたままにはしておけない。俺はアイテムストレージから体力回復薬を九本取り出し、彼らに配りながら、先程文句を言ってきた若い女性の護衛に、労いの言葉をかけた。

「女性の護衛は貴重だから頑張ってね!」

「はい。頑張ります」

 彼女は、先程の悔しさをバネにするかのように、きりっとした表情で答えた。その瞳には、揺るぎない決意が宿っている。

「使い慣れていない武器は、装備しない方が良いと思うよ。邪魔になるし、使いたいなら訓練をしないとな」

「はい」

 彼女は素直に頷いた。体力回復薬を配り終えて、ソファーに座ると、待ちかねたようにミリアが俺の膝に頭を乗せ、満足そうに目を閉じた。濡れた髪の束が、俺の太腿に優しく触れる。俺は、その柔らかな髪をゆっくりと撫で始めた。指の間を滑る、しっとりとした髪の感触が心地よい。

「そのネグリジェ可愛いな……ネグリジェ姿を初めて見たな」

 ミリアは、白いレースの縁取りが施された、淡いピンク色のネグリジェを身につけていた。その繊細な生地は、彼女の白く滑らかな肌を透かし、より一層可憐な雰囲気を際立たせている。

「えへへ……♡ 今日は、可愛いのを選んでもらいましたわ」

 ミリアは照れたように微笑んだ。頬の赤みが、湯気によるものか、それとも照れによるものか、判然としない。

「髪の毛も良い匂いだし」

 シャンプーの甘い香りが、ふわりと鼻腔をくすぐる。それは、優しく、どこか懐かしい香りだった。

「うふふ……♡」

 褒められてご機嫌なミリアだったが、30分もするとすぅすぅと穏やかな寝息を立て始めた。しばらく寝てしまったミリアの寝顔を眺めながら、頭を撫でたり柔らかくも弾力のあるぷにっとした感触の頬を撫でて癒されていた。このまま過ごしているわけにもいかず、俺はそっと彼女を抱きかかえると、近くに控えていたメイドさんがミリアの寝室に案内をしてもらいベッドにそっと寝かせた。

♢メイドとの会話、それぞれの胸の内

「有難うございました」

 メイドが深々と頭を下げた。その声には、主への深い敬意がこもっている。

「今日は、悪かったね……ふざけ過ぎたね」

 俺は少し反省しながら言った。

「ホントですよ……心臓が何回も止まりかけました」

 メイドは苦笑しながら、本音を漏らした。その表情には、疲労と、それ以上の安堵が混じっていた。

「悪い悪い……」

「でも……最近のミリア様は、とても楽しそうでした」

 メイドの言葉に、俺は少し驚いた。

「そうかな……? だと良いんだけどね」

「はい。本当に」

 メイドははっきりと頷いた。その言葉には、偽りのない確信が込められている。

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